BC-11AH-A/A2 の Raspberry Pi OS 13 (Trixie) での利用手順

2025年12月 4日 11ah

BC-11AH-A/A2 の Raspberry Pi OS 13 (Trixie) での利用手順

Posted by: otsuka

BC-11AH-A/A2用設定済み起動イメージファイル2025.11 Release
のページでも言及したように、
Newracom の NRC7394 Software Package for Host mode (Linux OS) は
・ネットワークの管理が dhcpcd で行われていること
・linux kernel が 6.1.* であること
が正常に動作する要件でした。

このため、Raspberry Pi OS 12 (Bookworm) から
・ネットワーク管理が dhcpcd から NetworkManager になった
・2025年5月6日リリースのイメージ以降 linux kernel が標準で 6.12.* になった
ことで、
Raspberry Pi OS 12 (Bookworm) 以降の Raspberry Pi OS で起動している
・Raspberry Pi 3
・Raspberry Pi 4
64bit の Raspberry Pi OS 12 (Bookworm) 以降の Raspberry Pi OS でしか起動できない
・Raspberry Pi 5
では NRC7394 Software Package for Host mode (Linux OS) を必要とする BC-11AH-A/A2 は
使用することができませんでした。

BC-11AH-A/A2 はもともとは
できるだけ NRC7394 Software Package for Host mode (Linux OS) をそのまま使用していただく
ことを想定していたのですが、BC-11AH-A/A2 を新しい環境でも使用していただくため
必要最小限の変更を加えて Raspberry Pi OS 13 (trixie) で BC-11AH-A/A2 を使えるようにする手順
を紹介します。

ここで行う変更は BeatCraft の責任で試行して紹介しているものです。

1. kernel 6.12.x 対応版 nrc driver を含む nrc7394_sw_pkg の設定とインストール

nrc7394_sw_pkg を folk し、 Raspberry Pi kernel 6.12.* でもビルドが成功するよう nrc driver を調整しました。
以下の github リポジトリから BeatCraft 改変版の nrc7394_sw_pkg をダウンロードし
Raspberry Pi OS 11 (Bullseye) 向けに設定するのと同じ手順で設定してください。

https://github.com/BeatCraft/nrc7394_sw_pkg/tree/kernel_6_12_support

pi@raspberrypi:~ $ cd Downloads
pi@raspberrypi:~/Downloads $ git clone --branch kernel_6_12_support https://github.com/BeatCraft/nrc7394_sw_pkg.git nrc7394_sw_pkg-kernel_6_12_support
Cloning into 'nrc7394_sw_pkg-kernel_6_12_support'...
remote: Enumerating objects: 1378, done.
remote: Counting objects: 100% (339/339), done.
remote: Compressing objects: 100% (166/166), done.
remote: Total 1378 (delta 202), reused 231 (delta 173), pack-reused 1039 (from 1)
Receiving objects: 100% (1378/1378), 135.60 MiB | 18.70 MiB/s, done.
Resolving deltas: 100% (889/889), done.

この nrc7394_sw_pkg-kernel_6_12_support を使って
BC-11AH-A/A2用設定済み起動イメージファイル2025.11 Release
で紹介したのと同じ設定を Raspberry Pi OS 13 (Trixie) 上で行なってください。

上記ページ「3.2. nrc7394_sw_pkg のインストール」の
update.sh 実行の際、
/home/pi/Downloads/nrc7394_sw_pkg-kernel_6_12_support/package/src/nrc/
の nrc driver がビルドされますが、
Raspberry Pi 4 で起動している場合には
kernel 6.12.47+rpt-rpi-v8 向けにビルドされ、
Raspberry Pi 5 で起動している場合には
kernel 6.12.47+rpt-rpi-2712 向けにビルドされて
出来た nrc.ko が
/home/pi/nrc_pkg/sw/driver/nrc.ko
にコピーされます。

2. NetworkManager の停止

nrc7394_sw_pkg で 11ah インタフェースを様々なモードで起動するスクリプト start.py は
dhcpcd での管理を前提に記述されているので、
NetworkManager を停止します。
NetworkManager による管理に戻せるようアンインストールはしません。

pi@raspberrypi:~ $ sudo systemctl stop NetworkManager.service
pi@raspberrypi:~ $ sudo systemctl disable NetworkManager.service

3. iptables、dhcpcd5、openresolv のインストールと設定

dhcpcd パッケージをインストールします。
dhcpcd と連携して dns 設定を行う openresolv もインストールします。

pi@raspberrypi:~ $ sudo apt install dhcpcd5 openresolv

また、Raspberry Pi OS 12 (Bookworm) から iptables の代わりに
nftables が default でインストールされるようになりましたが、
start.py では iptables で NAT 等の設定をするので iptables もインストールします。

pi@raspberrypi:~ $ sudo apt install iptables

上記パッケージのインストール後、
Raspberry Pi OS 12 (Bookworm) 以降削除されてしまった dhcpcd の設定ファイルを
設定した nrc7394_sw_pkg の中からコピーしておきます。

pi@raspberrypi:~ $ cd nrc_pkg/etc/dhcpcd/
pi@raspberrypi:~/nrc_pkg/etc/dhcpcd $ sudo cp dhcpcd.conf /etc/

4. dnsmasq のインストールと dhcpcd との連携の調整

次に主に AP 動作のときに必要となる dnsmasq もインストールします。

pi@raspberrypi:~ $ sudo apt install dnsmaswq

Raspberry Pi OS 11 (Bullseye) までは dnsmasq をインストールしたら
dhcpcd で取得した dns 情報を dhcpcd の resolvconf hook がうまく処理して
/etc/resolv.conf と /run/dnsmasq/resolv.coonf を書き換え
名前解決ができるようにしてくれたのですが、
Raspberry Pi OS 13 (Trixie) に dhcpcd を入れても
Raspberry Pi OS 12 (Bookworm) 以降に入った NetworkManager 向けの調整のためか
dnsmasq と連携する設定を正しく書き換えてくれなくなってしまいました。

そこで、dhcpcd の hook を新たに追加してしまいます。

/lib/dhcpcd/dhcpcd-hooks/
に
90-dnsmasq-resolvconf
という名前で以下の内容のファイルを作成します。

#!/bin/sh
# 90-dnsmasq-resolvconf
# eth0 の DHCP 情報から /run/dnsmasq/resolv.conf を生成する

IFACE="eth0"
SRC="/run/resolvconf/interfaces/${IFACE}.dhcp"
DST_DIR="/run/dnsmasq"
DST="${DST_DIR}/resolv.conf"

# dhcpcd のフック理由のうち、IP が変わるタイミングでだけ実行
case "$reason" in
    BOUND|RENEW|REBIND|REBOOT|INFORM)
        [ "$interface" = "$IFACE" ] || exit 0

        if [ -f "$SRC" ]; then
            mkdir -p "$DST_DIR"
            # nameserver 行だけ抜き出して書き出す
            grep '^[[:space:]]*nameserver[[:space:]]' "$SRC" > "$DST"
        fi
        ;;
    *)
        exit 0
        ;;
esac

作成後これに実行権をつけます。

pi@raspberrypi:~ $ sudo chmod +x 90-dnsmasq-resolvconf

これで dhcpcd が dhcp サーバーから取得した dns 情報を
openresonv の resolvconf が /run/dnsmasq/resolv.conf に書き出し、
/etc/resolv.conf は 127.0.0.1 のローカルを見に行くよう設定され
dnsmasq が dnsフォワーダーとして動作して名前解決が行われるようになります。

ここまでの設定を行うことで
Raspberry Pi OS Trixie でも BC-11AH-A/A2 が使えるようになります。

ただし GUI に一点調整不能の問題があります。
Raspberry Pi OS 11 (Bullseye) までは
dhcpcd で設定されたインタフェースの接続状況が
GUI のツールバーのネットワークアプレットに表示されたのですが、
NetworkManager での管理に変更された Raspberry Pi OS 12 (Bookworm) 以降では
ツールバーのネットワークアプレットも NetworkManager と連携するよう変更されており、
その状態の Raspberry Pi OS 13 (Trixie) に dhcpcd をインストールしているため
ツールバーのネットワークアプレットは eth0 や 11ah の wlan0 が正しく接続できていても
接続されていない状態の表示のままになります。
この点だけは現状で解決方法がありません。
ターミナルから ifconfig や iw コマンドでネットワークの状態を確認してください。